ライアンの娘(1970/英/195分) 映画の感想
イギリスからの独立運動の最中のアイルランド、ディングル半島の田舎町の酒場の店主ライアンの娘ロージーは、年上の教師で彼女の恩師でもあるチャールズと結婚する。しかしロージは次第に彼との結婚に退屈さを感じるようになり、町に駐屯軍の司令官としてやってきた戦場で心に傷を負った若きイギリス軍将校ランドルフに惹かれ彼と関係を持ってしまう。そんな折り町で隠密活動をしていたアイルランドのレジスタンスたちがイギリス軍に捕まるという事件が起こる。町の住民はイギリス軍将校と関係のあるロージーを密告者であるときめつけ彼女をつるし上げるが・・・。
『アラビアのロレンス』や『ドクトル・ジバゴ』の名匠デヴィッド・リーン監督による人間ドラマ。ロージー役に『午後の曳航』のサラ・マイルズ、彼女の夫のチャールズ役にロバート・ミッチャム、イギリス軍将校ランドルフ役にクリストファー・ジョーンズ。このサイトを始めてからというもの酷い出来の映画をとにかくたくさん観続けてきたが、そんな中にあって本作を観て、デヴィッド・リーン監督の圧倒的な演出力や、監督の捉えた人間の卑小さに対比される雄大なときに厳しくときに美しい自然の描写に胸を震わされた。物語も非常に力強く胸にズシンと来る感動的なもので、この感動はいったい何処から来るのだろうといろいろと思いを巡らしてみたところ、それはキリスト教(聖書)における「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい。」から来ているのかなと推測した。そしてそこからキリスト教の教えを超えた、罪を犯したものやのけ者などへの普遍的な愛や慈しみを語っていることが本作をさらに感動的な物語にしているのだなと理解した(後半の漫画版「デビルマン」のような住民による激しいつるし上げシーンもその点から解釈すれば納得できる)。ロバート・ミッチャムやサラ・マイルズもさることながら、作品のテーマを体現した公正な神の視座に立ってゆるぎない神父役のトレヴァー・ハワードや知的障碍者で疎外者役のジョン・ミルズの演技が文字通り神がかっていて素晴らしい(ミルズは本作の演技でアカデミー助演男優賞を受賞)。このように見事な名作であると私は『ライアンの娘』を評価するが、当時映画監督として絶頂期に会ったデヴィッド・リーン監督は、本作を主にアメリカの映画批評家たちから酷評され、それを苦にして1984年の『インドへの道』(彼の遺作)まで14年間メガホンをとらなかった。これは当時はアメリカ映画界が変革期にあり、アメリカ人の新進気鋭の監督たちによって斬新で躍動感に満ちた「あらたな映画」が生み出されようとする中、本作が保守的で古めかしく大仰に映ったこと(決してそうではないと私は思うが)、そして圧倒的成功を収めていたイギリス人映画監督へのアメリカ人の映画関係者の嫉妬もあってのことではなかったかと思われる。
サラ・マイルズのヌード
表現はありきたりだが、本作におけるサラ・マイルズは、雄大な自然の中にひっそりと、しかし力強く咲く美しい一輪の花のようで素晴らしい(言ってて恥ずかしい)。クリストファー・ジョーンズとのラブシーンで当時としては大胆なヌードを見せている。
ライアンの娘 ウィキペディア
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Faraway Productions Metro-Goldwyn-Mayer (through MGM-EMI Distributors
午後の曳航(1976/英/米/日/105分) 映画の感想
海に栄光や大義、浪漫を求めそれを「獲得」していた水夫ジムは、寄港先で、アンティークショップを営む夫を亡くし子連れのアンという女性と出会い関係を持ち、所帯を持とうとする。しかし彼を「英雄」と崇め慕っていたアンの息子ジョナサンは、彼が海を捨て死から遠ざかりだんだんと普通の男に成り下がっていくのに幻滅し、秘密の少年クラブの仲間たちとともに彼に英雄的な死を与えようと画策する・・・。
三島由紀夫の同名小説を舞台をイギリスに置き換えて映画化した作品。監督はソンドラ・ロックの『恐怖の影』や、チャールズ・ブロンソンの『メカニック』のルイス・ジョン・カリーノ。ジム役に歌手で俳優のクリス・クリストファーソン、アン役には『ライアンの娘』でアカデミー主演女優賞にノミネートされたサラ・マイルズ。私は原作のファンで、原作を先に読んでから映画版を鑑賞した。かなり原作に忠実に作られた映画で原作ファンとして好感を持ったが、どうしても小説と比べてしまい本作にはまともな評価が下せない。三島由紀夫の小説が原作であることはひとまず置いといて、一つの映画として観るのならば70年代特有のアンニュイさ、不条理、子供の残忍性や性の誇張などが感じられてかなり好き(『妖精たちの森』に近い空気感)。きつい表現もそれなりにある。主演の二人は悪くはないが、別の選択肢も考えられ(当初バート・ランカスターの出演が考慮されていた)、俳優が違っていたらまた評価も違っていたようにも思う。
サラ・マイルズのヌード
自慰のシーン、主人公とのベッドシーンでヌードを披露。現在のの基準でも大胆なヌードで、なかでも自慰のシーンが艶めかしい。
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Haworth Productions by Martin Poll-Lewis John Carlino Production Sailor Company AVCO Embassy Pictures
サラ・マイルズがヌードになった映画
サラ・マイルズ(Sarah Miles, 1941年12月31日 – )は、イギリスの女優。デヴィッド・リーン監督の『ライアンの娘』ではアカデミー主演女優賞にノミネート
1970年 ライアンの娘 Ryan’s Daughter Amazon
1972年 レディ・カロライン Lady Caroline Lamb Amazon
1973年 キャット・ダンシング The Man Who Loved Cat Dancing Amazon
1976年 午後の曳航 The Sailor Who Fell from Grace with the Sea Amazon
1985年 スチームバス/女たちの夢 Steaming Amazon