マリアンナ・ヒルのヌード アメリカを斬る

アメリカを斬る(1969/米/110分)　映画の感想
マリアンナ・ヒルのヌード

アメリカを斬る(1969/米/110分)　映画の感想

1968年、ジョン・カセリスはTV局のニュースカメラマンで彼は車の事故現場から反戦活動化を鎮圧する軍の演習や黒人ゲットーなど日夜取材に追われていた。そんなある日彼はTV局が取材テープをFBIに見せていることを知り、それが原因か突然解雇される。フリーになった彼はシカゴの民主党大会の取材をするが、偶然出会い恋に落ちた貧困白人のアイリーンの息子が失踪し彼女が反戦活動化と警察と軍とが一触即発状態のシカゴで息子を探して彷徨っていることを知り動揺する･･･。

ドキュメンタリーとフィクションが混合し、娯楽要素とアート要素と社会批評の要素とが見事に融合した傑作映画。監督は『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』『夜の大捜査線』『カッコーの巣の上で』『アメリカン・グラフィティ』『帰郷』『天国の門』(もの凄いキャリア！)などを撮影したアメリカを代表する映画カメラマンであるハスケル・ウェクスラー。主演はロバート・フォスター。他の出演者にヴァーナ・ブルーム、マリアンナ・ヒル、ピーター・ボイル。シネマ・ヴェリテやダイレクトシネマとっいったドキュメンタリーの手法が取り入れられ、即興演出や大胆な編集やカットなどゴダールなどのヌーヴェルヴァーグなどの影響が感じられ、素人とプロの俳優を混ぜ合わせ、フィクションでありながら、それと並行して同時に60年代後半という激動のアメリカ社会の様相を生々しくドキュメンタリータッチで捉えているのが特徴。撮影は名カメラマンである監督自身が手掛けていて見事で、俳優たちが実際の騒然とする危険なシカゴの民主党の党大会の現場で撮影を行っていたりしていて凄い。ロケ地も含めた即興性と綿密な演出とが融合したドラマパートも素晴らしく、また冒頭の車の事故現場のシーンに始まり途中ヤコッペッティのフェイクドキュメントなどにも言及したりしながらアメリカンニューシネマらしいラストシーンに至る、その中に描かれるマスメディアというものに対する風刺も秀逸。