SF/ボディ・スナッチャー(1978/米/115分) 映画の感想
宇宙から植物状の謎の物体が地球に飛来し花をさかす。その花を保健局員のエリザベスが家に持ち帰るが、翌朝彼女の夫の態度がおかしいことに気づき同僚のマシューにその事を打ち明ける。マシューは精神科医のギブナーに意見を聞くことを勧める。ギブナーは気のせいだと答えるが、ギブナーの友人のジャックが自分の複製体が作られているのを目撃したことから事態は急変する。マシューはエリザベスの身を案じ彼女のもとに向かうが、睡眠中のエリザベスの側でも彼女にそっくりな複製体が育っており・・・。
植物状のエイリアによって体を乗っ取られ地球が侵略されるジャック・フィニイのSF小説『盗まれた街』の二度目の映画化作品。監督は『ライトスタッフ』『存在の耐えられない軽さ』のフィリップ・カウフマン。出演者はドナルド・サザーランド、ブルック・アダムス、レナード・ニモイ、ジェフ・ゴールドブラム、ヴェロニカ・カートライト他。私の好きな映画で、個人的にモダンホラー映画の傑作の一つだと思う。といいいつモダンホラーにはっきりとした定義はないが、ひとまずは、ホラーを構造的に分析し、そこに描かれる恐怖やモンスターを人間の心の闇や社会問題が形を変えて表現されたものと解釈し、単純な善悪二元論を排除し、古城や墓場といったホラーでありがちな設定を好まず(描くにしても定型に対し相対的に描き)、「リアル」な人間社会を舞台にし「リアル」な人間関係を描くなどの特徴があるといえる。小説では、たとえばモンスターと戦っていたはずの主人公こそ伝説のモンスターであったと従来のモンスターの概念を大きく一変させたリチャード・マシスンの『地球最後の男』、映画ではそれにインスパイアされたジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』などがあげられる。本作の主人公(ドナルド・サザーランド、ブルック・アダムス)が保険局の職員という設定で、彼らの周囲の人間関係や日常が描かれつつ、そこから彼らの職業を通して未知のエイリアンの脅威がじわじわと明らかになっていく展開が巧みで「リアル」。レナード・ニモイ演じる精神科医の発現はメタ的なものにはならないところで、ホラー映画への分析的解釈となっている。エイリアンは脅威ではあるが、集団で活動し個というものは薄く悪意も希薄で、決して単純な悪と割り切ることはできない(それを踏まえたラストは辛辣で衝撃的)。自分が自分でなくなることの恐怖を、個人の問題だけではなく人間社会の問題としても描いていて全体主義や共産主義なども想起させ怖くて深い(主人公たちの必死の戦いはある意味本能的でありある意味実存的)。モダンホラーの面から本作を評価してきたが、娯楽映画として見てみても、有名な鞘状のエイリアンや人面犬のデザインなどの特撮は素晴らしく、従来のホラー映画らしい見せ場も十分で適度のエロ要素もあり、楽しい。フィリップ・カウフマン監督を私は高く評価していて、映画における演出、人間描写や芸術性や娯楽性や性のモチーフなどにおいてヨーロッパ的なウェットさとアメリカ的なドライさを適度に合わせ持つクリエイターだと思っているが、本作でもそれが発揮されていて、既存の侵略SF映画とはテイストの違う「品の良さ」があってそこも良い。また監督は『存在の耐えられない軽さ』など恋愛映画にも定評があるが、ドナルド・サザーランド、ブルック・アダムス演じる男女に愛が芽生え、そこから映画後半の、本作のテーマである自分が自分でなくなることの恐怖を愛と性の板挟みから描いたシーンに繋がっていくという一連の流れはメロドラマチックで悲劇的でその上でメッセージ性もあり素晴らしい。公開当初賛否両論があったらしい『SF/ボディ・スナッチャー』だが、時を経て本作は現在ホラー映画史上最高の作品の一つに数えられるにまで至っている。
ブルック・アダムスのヌード
ブルック・アダムスは、夫がエイリアンに乗っ取られる保険局の職員の役。前述した映画後半の重要シーンなどでヌードを見せる。彼女は本作の他にも『デッドゾーン』や『ゲシュタポ卍死霊軍団/カリブゾンビ』などのジャンル映画に出演していて、日本人受けする容姿もあって、ホラー映画が好きだった私にとってかなり思い入れのある女優さん。ブルック・アダムス以外の主要な出演者は、ドナルド・サザーランド、レナード・ニモイ、ジェフ・ゴールドブラム、ヴェロニカ・カートライトと、みな個性的な役者で幾分神経質な演技をみせるが(作品に効果的に働いている)、「平凡」な彼女がそれに埋没せずそれがかえってヒロインとして彼女を引き立たせているところが良い。
SF/ボディ・スナッチャー ウィキペディア
SF/ボディ・スナッチャー IMDb
SF/ボディ・スナッチャー ブルック・アダムスのヌード画像へのリンク
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Solofilm United Artists
ブルック・アダムスがヌードになった映画
ブルック・アダムス(Brooke Adams、1949年2月8日 – )はアメリカ合衆国の女優。
1978 SF/ボディ・スナッチャー Invasion of the Body Snatchers
1985 恋人たちの合鍵 Key Exchange
1991 チャイルド・ショック The Unborn